SIX MOON DESIGNS Lunar Soloで北岳山荘テント泊登山する技術

こんにちは、shuheiです。

ちょっと前になりますが、北岳間ノ岳縦走登山に行ってきました。

久しぶりのテント泊で最高に楽しかったのですが、過去最高に大変な目にも遭いました。

今回はSIX MOON DESIGNSというアメリカのUL系登山ギアメーカーが販売しているテント、Lunar Solo(ルナーソロ)を使って北岳山荘でテント泊をしてきたので、そのテントレビューもしようという記事です。

それではよろしくお願いします。

北岳間ノ岳

「日本で一番高い山は富士山ですが二番目はご存知ないでしょう?つまり何事も一番にならないとダメなんです」という自己啓発セミナーで散々使われている(偏見)セリフがあります。

我々からすると3000m峰21座全部言えるので「北岳3,193mですが?」とポカン顔で答えられてしまうんですが。

その北岳日本百名山の一座であり、山梨百名山の一座でもあります。

そしてその南側には3,190m奥穂高岳と並んで日本の標高第3位の山、間ノ岳です。

今回はその標高2位と3位の両座に一度の山行で行ってしまおうという大変贅沢な登山です。

SIX MOON DESINES Lunar Solo

これはいつかの雲取山でのテント泊風景

アメリオレゴン州にあるULガレージブランドの有名な軽量ワンポールテントLunar Soloを今回の山行に持って行きました。

重量690g、シングルウォールでありながら入り口付近が蚊帳になっていて前室がある珍しいタイプのテントです。

非自立式の為、設営には120cm程度のポールと張り綱を使います。

良いところ

  • 軽量
  • 小さく畳める
  • 蚊帳が付いている
  • 前室がある
  • 結露しにくい

悪いところ

  • 設営にコツがいる
  • 風に弱い
  • 雨が入ってくる
  • 結露はする

正直なところ非常に場所を選ぶテントという感じです。特にペグダウンできないような砂地や岩場のテント場だと岩に張り綱をくくりつけるのですが、これをしっかりやらないと風が強い夜にはテントが倒れてきてしまいます。

これはLunar Soloに限った話ではなく非自立式のテントの多くが抱える問題のひとつです。

風も受けやすい構造をしているので、風が強い稜線のテント場では大きめの岩をこれでもかというくらい使って、全張り綱をガッツリ張るようにしてください。

ペグダウンできる場所ならあまり心配はありません。

 

通常のシングルウォールテントと比較すると通気性が良いので結露はしにくいですが、それでも多少は発生します。

夜明けに垂れてくるほどではありませんが、シュラフとウォールが当たっているとダウンが萎む程度には濡れますのでシュラフカバーがあると便利です。

持ち物

今回は7月上旬の1泊2日のテント泊です。

日の出直後0〜5℃程度を想定し、行動中は基本暑いだろうと考えました。

  • 大型ザック(Gregoryバルトロ65)
  • テント(SIX MOON DESINGS Lunar Solo)
  • ペグ(V字型アルミペグ×10)
  • グランドシート(タイベックシート)
  • 3シーズンシュラフモンベルダウンハガー#3 800)
  • スリーピングマット(サーマレストネオエアーウーバーライトL)
  • レインウェア(The North Face クライムライトジャケット、The North Face レインパンツ)
  • インサレーション(モンベルアルパインダウンジャケット)
  • インナー上(Millet ドライナミックメッシュ、Goldwin クールハイネックロングスリーブ)
  • インナー下(Under Armor レギンス)
  • ダウンパンツ(Nature Hike ダウンパンツ)
  • ダウンシューズ(Nature Hike ダウンシューズ)
  • クッカー(SOTOアミカスクッカーコンボ)
  • 帽子(The North Face ハット)
  • トレランシューズ(Sallomon SENSE RIDE 3)
  • ストック(Helinox トレッキングポール2本1セット)
  • 水(nalgen広口0.5L、platypusソフトボトル1.0L×2)

撮影機材

全部で15kgほどです。カメラがあるのでどうしてもこれくらいの重量になってしまいます。本当はザックももう少し小さく軽くしたい。50Lくらいで充分かなと思っています。

トレッキングポールはテントポールと兼用です。

撮影機材はカメラボディ1台とレンズが2本です。

いつも付けっぱなしの便利ズームと星撮影用の超広角単焦点レンズです。ただ夜は天気が悪く、結果的に14mmは使いませんでした。

広河原登山口ルート

北岳間ノ岳テント泊 / shuheiさんの間ノ岳北岳中白根山の活動データ | YAMAP / ヤマップ

今回はオーソドックスな北岳のルート、広河原登山口から間ノ岳までのピストンです。

 

広河原山荘付近の登山口から入り、白根御池小屋から綺麗な花畑を抜け、稜線へ。

稜線に上がったら北岳肩ノ小屋で小休憩し、北岳を経て北岳山荘に到着します。

2日目は北岳山荘テント場に荷物をデポし、間ノ岳にアタック。

そこからは登山口である広河原山荘まで同じ道で戻ります。

登山口までのアクセス

今回は新宿から出ている登山バスツアーを利用することにしました。

ykbus.jp

夜に新宿西口に集合しバスに乗って甲府へ。街から少し離れた日帰り温泉施設の大部屋で仮眠をし、早朝路線バスに乗って広河原山荘まで向かってくれます。

夏山登山時期は夜叉神峠の手前あたりからマイカー規制が実施される為、今回単独登山ということもあり、車で近くまで行くメリットもあまりなく公共交通機関で向かうことにしました。

帰りは路線バスで甲府駅まで出て、中央ライナーで新宿まで帰ってくる予定です。

DAY 1 広河原山荘出発

仕事終わり、22時に新宿西口コクーンタワー前から山梨交通のバスに乗り込み、0時を過ぎた辺りで仮眠場所の湧暇李の里 樹園に到着。

仮眠所の様子

朝4時に路線バスに乗り6時過ぎに登山口の広河原着。

お手洗いを済ませて6時40分に登山開始。

広河原〜白根御池小屋

Nikon Z6, NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR, 1/250s, F8, ISO 1250

この日はあまり天気が良くなく、一日中曇り、午後から少し雨が降る予報だったので、なるべくサクサクと進むことにしました。

日本第二位の標高3,193mまで行くのにスタートの広河原山荘の標高は1,530m。高低差は1,600m超ともあって序盤からガッツリ急勾配を登ります。

初心者はだいたい1日の累積標高は1,000m程度にすると体力的にも無理がなく、高山病にもなりにくいと言われているので、今回の山行が間違っても初心者向けでないことはわかるはず。

急勾配の樹林帯を小休憩を挟みながら登ること2時間40分、最初の山小屋、白根御池小屋が見えてきました。

白根御池小屋〜小太郎尾根

お腹も空いたので少し長めの休憩をすることにしました。

僕の携帯回線はauなのですが、この山行中は携帯の電波はほとんど入りませんでしたが、この白根御池小屋はStarlinkを使った山小屋Wi-Fiが使えました。インターネットに接続できたのはこの2日間でこの場所だけでしたね。

 

腹ごしらえも済んだので進むことにします。先はまだまだ長い。

ここからまた急登の草すべりを登っていきます。

この辺りから背の高い木がだんだん少なくなってきて稜線が近いことがわかってくるのですが、とにかく勾配がキツく、なかなか稜線に出ることができません。

白根御池小屋を出発して2時間が経過し、途中にシナノキンバイの花畑が見えたら稜線までもう少し。

ようやく稜線に出て、小太郎尾根が見えました。

小太郎尾根〜北岳肩ノ小屋

Nikon Z6, NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR, 1/400s, F16, ISO 450

稜線に出ると風は強いのですが景色は最高です。

鳳凰三山オベリスク甲斐駒ヶ岳の特徴的な山頂が見えてきます。

これまでの急登と比べるとあっという間にに北岳肩ノ小屋に着きました。

北岳肩ノ小屋〜北岳山荘

北岳肩ノ小屋の有名なフォトスポット

まもなく13時というところだったので昼食にしました。しかし天候が悪化し、今にも雨が降りそうだったのですぐに出発しました。

登り初めて15分程度経過して、少し雨がパラついて来たかなと思っていたら、北岳山頂に着く頃にはかなり強い雨になっていました。

慌ててレインウェアの上下を着て、北岳山荘まで降っていきます。

 

雨とガスで数メートル先がほとんど見えないのに、ちょっとした岩場を降りて行かなくてはならず、慎重に足を置きながら進みます。

山頂からおよそ1時間かけてなんとか北岳山荘に到着、テント場の受付を済ませて幕営し、今日の山行を終えました。

北岳山荘テント場

雨の中テントを幕営したのですが、テント場の地面が柔らかく、ほとんどペグが効かないので近くの岩を集めて張り綱を固定するのですが、非常に風が強く、かなり苦戦して張りました。

ようやく張ることができたので、テントで一眠りしていたら、すっかり雨が上がって夕焼けが広がっていました。

近くを散歩したり夕飯を食べたりして過ごし、20時頃早めに就寝しました。

 

しかし、夜になっても風は収まることがなく、張り綱のテンションが下がって夜中に何度もテントが倒れてしまい、その度に起きてテントを設営し直していました。

過去一番山で眠れなかったかも。

周りのテントを見ると張り綱の固定の為の岩の量が圧倒的に少なかったようです。

DAY2 間ノ岳

Nikon Z6, NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR, 1/125s, F11, ISO 900

夜ほとんど眠れなかったので予定よりも30分程遅く目覚めました。

しかも本当はテントも荷物もそのままテント場にデポして間ノ岳に行くつもりでしたが、空っぽのテントが今にも風に飛ばされてしまいそうだったのでテントを片付け、荷造りをして、ザックを小屋のそばに置いて、アタックザックで間ノ岳に向かうことにしました。

 

5:40、ようやく間ノ岳へ向かって進み始めます。

DAY1とは打って変わって、青空も見え、非常に良い天気。風だけが異様に強かったのを覚えています。

途中富士山が見えました。

白根山を超えて1時間半、間ノ岳に到着です。

仙丈ヶ岳も良く見えます。

間ノ岳北岳山荘

Nikon Z6, NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR, 1/125s, F16, ISO 280

北岳山荘に戻ります。

昨日は雲で全然見えなかった北岳が本当に綺麗に見えます。

来てよかった〜

降りなのに写真を撮りすぎて全然進まない。山行中一番楽しい瞬間です。

北岳山荘〜北岳

8:20頃、テント場に戻ってきました。

テントはすでに撤収できているので、朝食がてら北岳山荘でカップヌードルを食べて腹ごしらえをします。やはり山で食べるカップヌードルが一番美味しい気がする。

ついでに間ノ岳百名山バッチも購入。

 

9時頃、北岳に向かって出発です。

昨日は雨の中降りていて、雲で前がほとんど見えなかったので気づかなかったのですが、なかなか高度感があって怖い岩場を降っていたようです。

今は登りなのであんまり下を見ることがありませんが、たまに足元を見ると崖の下まで見えてしまい、結構怖いなと思いながら進みました。

 

10時10分、2度目の北岳登頂。

昨日は雨も降っていたし急いでいたので、全然山頂を堪能できていなかったので少し休憩して山頂からの景色を楽しむことに。

 

北岳北岳肩ノ小屋〜小太郎尾根

Nikon Z6, NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR, 1/125s, F16, ISO 125

今回の山行、大きな登りは全て終了しました。

あとはここから広河原までひたすらに降るだけです。登りで体力が削られることはないけど、膝が大丈夫かしら。

 

北岳肩ノ小屋まで30分ほどで駆け降りて、買い物。

行きは荷物になるし、まだ登頂もしていない山のバッチを買うのも気が引けるので、買わなかったお土産の手拭いと北岳百名山バッチを購入しました。

 

11時15分。さて、あとは降るだけ。

稜線は寒いのでレインウェアを着てひたすら降ります。

小太郎尾根〜白根御池小屋

Nikon Z6, NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR, 1/400s, F6.3, ISO 560

登りは急登で大変だった草すべりも降りは転ばないように慎重に降っていきます(1回大きく転んだけど)

 

13時手前に白根御池小屋に到着。

標高も下がってきたのでかなり熱くなってきたのでアイスをいただくことに。

ここで24時間ぶりにインターネットに繋ぐべく、2度目の山小屋Wi-Fi

家族に無事の連絡をし、樹林帯へと向けて出発しました。

白根御池小屋〜広河原

樹林帯に入っても急勾配は変わらず、ひたすら標高を下げる作業を続けます。

なかなか膝にもダメージが来ていてあまりスピードは上げられないですが、白根御池小屋を出発するタイミングで、もはや広河原到着から1時間以上バスを待たないといけないことはわかっていたので、特に焦りもせず、のんびり降ります。

ですが、やはりだんだんと飽きてくるし、早くこの状況を抜け出したい一心で下山していきます。

15時30分、広河原登山口が見え、今回の山行を無事終えることができました。

下山〜甲府太宰治

広河原から路線バスで甲府駅に戻ってきました。

駅のコインロッカーにバルトロを預けて、タクシーに乗り込み、太宰治ゆかりの銭湯、喜久乃湯温泉へ向かいました。

中に入ると靴箱があり、その先はもう男女別れて入る扉。

扉を開けるとそこはもう脱衣所で、番頭台に座った番頭さんにお金を払う、昔ながらの銭湯。

趣がありすぎて、中の写真を撮りたかったんだけど、靴箱以外全てがプライベートエリアなので、何一つ写真に収めることができませんでした。

 

登山前日の朝から家を出ているため、二日ぶりにお風呂に入って、すっきりしたのも束の間、駅まで歩いて帰る間にすっかり汗をかいてしまいました。

レンタサイクルとかもあったらよかったんですが、ちょうど七夕祭りをしていて街の雰囲気も楽したので結果良かったと思います。

振り返り

テントについて

今回はテント、SIX MOON DESIGNS Lunar Soloに一番悩まされました。

風が強い稜線ではかなりしっかり固定しないと張り綱のテンションが下がってポールが倒れてしまいます。

実は以前にも蝶ヶ岳ヒュッテのテント場で幕営した時も、一度だけ夜中にテントが倒れてしまったことがありました。

岩場や砂地のようなペグダウンで固定がしっかりできないテント場で岩を使った固定方法はまだまだ技術が足りないと感じました。

風速20m/sを凌げるくらいの幕営技術が必要です。

トレランシューズについて

北岳山頂手前から北岳山荘までの約2時間、雨に降られた為、結構靴の中がぐしょぐしょに濡れてしまいました。

基本的にこの時季の夏山登山ならば凍傷の心配はない為、足が濡れることのデメリットはちょっと気持ち悪いくらいです。

しかし場合によっては靴擦れを起こしてしまう可能性があるので、靴擦れ対策の替えの靴下やバンドエイド等は持っておいた方が良さそうです。

ちなみに靴は2日目の朝までに完全には乾きませんでしたが、歩いているうちに分からなくなりました。

カメラについて

今回はNikon Z6 + NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VRが大活躍しました。

ただ撮影状況的に、200mmまで必要な場面もあまりなく、暗い場面での撮影もほとんどなかったので軽量さを第一にNikon Z fc + NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VRでも良かったかもしれません。

 

ですが実はこの後Z6をZ6IIIに買い替えた為、この山行がZ6の引退試合となりました。

最後の撮影の機会がこの北岳間ノ岳テント泊登山だったのはなんだか感慨深い気持ちになりますね。

 

スケジュールについて

今回1泊2日の山行で、初日北岳山荘まで行く山行にしましたが、 北岳肩ノ小屋に2泊する山行でも良かったかなと思います。

薄々感じていましたが、僕は写真を撮る為に山に登っているので写真を撮る時間的余裕がある山行にしないと本末転倒になってしまうんです。

CT1〜1.2で1泊の山行なら2泊にして少し寄り道したり、最終日を早めに下山して街の観光に当てたりするのが体力的にも写真活動的にも良さそうです。

 

総括

概ね天候に恵まれた山行で非常に楽しく山歩きができました。

2年ぶりのテント泊登山でしたし、ソロのテント泊はあまり経験がなかったのですが、自分のペースで楽しむことができました。

 

枚数も少ないながら、好みの山岳写真が撮れたのも良かった。

 

北アルプスと違って人が少ないのも良かったですね。山行中人とすれ違う回数が段違いでした。

南アルプスが愛されている理由がよく分かりました。

ぜひまた伺わせてください。

 

それでは今日はこのあたりで。