皆既月食をインターバル撮影する技術(2025年版)

こんにちは、shuheiです。

 

先日2022年11月以来の皆既月食が2025年9月8日未明にあったので撮影してきました。

次回の参考になれば、また自分への備忘録的に情報を残しておこうと思います。

 

それでは本日もよろしくお願いします。

皆既月食とは

Nikon Zfc, SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary, 1/4s, F6.3, ISO 4000

改めて、今回の月食皆既月食といって、太陽の光が反射することで見えている月が地球の影に入ってしまうことで月が暗くなってしまう天文現象です。

 

冒頭の通り、今回2025年9月8日未明に起こる皆既月食は日本全国で見られるもので、2022年11月8日以来約3年ぶりの皆既月食です。

ちなみに次回は2026年3月3日に見られる為、比較的間隔が短く今回の撮影の反省を活かしやすいのではないかなと思います。

camelog.com

皆既月食タイムテーブル

おさらいとなりますが、2025年9月8日の皆既月食のスケジュールは以下の通りです。

現象 時刻 高度
半影食の始まり 0:26 45.0°
部分食の始まり 1:26 39.7°
皆既食の始まり 2:30 31.0°
食の最大 3:11 24.2°
皆既食の終わり 3:53 17.0°
部分食の終わり 4:56 5.2°

このタイムテーブルに沿って当日の撮影スケジュールや準備を進めていくことになります。

山中湖明神山パノラマ台

lake-yamanakako.com

今回撮影地に選んだのは山中湖明神山パノラマ台という山梨県と神奈川県と静岡県の県境付近のスポットで、眼前に広がる富士山と山中湖が一望できるスポットです。

以前紹介した皆既月食の撮影地を探す方法で見つけました。

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山中湖明神山パノラマ台の駐車場は普通車7台+車椅子用1台

冬季はおそらくスタッドレスタイヤ必須です。

 

御手洗も自販機もあり、非常に使いやすい絶景スポット。

欠点はデッキが意外と揺れること。人が歩いただけで揺れます。

都内の橋を車が通るたびに揺れるのと同じくらいの感じなので、吊り橋のような怖さは全然ありませんが、写真撮影においては長時間露光撮影がデッキでない場所でした方が良さそうです。

 

本来皆既月食を見るだけなら都内からでも十分観れるのですが、今回は月食中の月と富士山を一緒に風景写真として撮影したかったので山中湖まで足を伸ばしました。

当日のスケジュール

ここから細かく当日の動きを追っていきます。

21:00 三国峠駐車場着

まずは目当ての山中湖明神山パノラマ台に着いたのですが、この時点で既に駐車場がいっぱいになっていました。

部分食が始まるまでまだ4時間以上もあるのにみなさん熱心なんですね……。

 

仕方がないので静岡側に1kmほど離れた三国峠駐車場に駐車しました。

21:20 山中湖明神山パノラマ台着

撮影機材をザックで背負い、10分ほど舗装された山道を降り、ようやく今回の目的地である山中湖明神山パノラマ台に着きました。

 

駐車場の周りには何台か路上駐車がありました。

あんまり細かいことは言わない方なんですが、このスポットの出入り口がヘアピンカーブになっていてかなり見通しが悪いんですね。

そのカーブの先に何台か停車していたので少し心配にはなります。

できればちゃんと駐車場に停めるか見通しの良い場所で停車をしましょう。

21:35 撮影スタンバイ

到着した頃、既にデッキにはたくさんの三脚が並んでいました。

赤道儀を使って追尾撮影を始めている方もいましたが、ほとんどの方はカメラだけ三脚から外して車で待機しているようでした。

 

場所は限られてはいるものの、まだ三脚を立てられるくらいのゆとりはあったので、さっと設営して画角調整を行います。

 

撮影地の選定の後、実際の風景でどのように月と太陽が移動するかをスーパー地形というアプリを使って確認し、それに合わせて構図を作ります。

www.kashmir3d.com

思ってたより富士山の左側で食が始まってしまうようで、山中湖があまり入らない構図になるな、ということがわかるわけです。

こういうのも事前に調べておく必要があるのですが、やはり実際に見てみないことには分からないことも多いです。

皆既月食が始まるまで待機

この時点で部分食が始まるまで4時間ほど、そこからだいたい1時間おきに月の状態が変わっていきますが、撮影終了までおよそ8時間この場で待機します。

 

0時頃を境に人がパラパラと戻ってきました。

みんながどんな機材で撮影してるのか見るのちょっと好き。

 

やはり望遠レンズで狙っている方が多かった印象です。

大きめの赤道儀を使っている方もそこそこいて、逆に僕のように広角レンズを使っている方はそんなに多くなかったかも。

 

もちろん撮影目的じゃなく、鑑賞目的で来ている人もちらほらいました。

でも比率で言うとだいたい2:8でカメラを構えている人が多かったですね。

1:26〜2:30 部分食の始まり

月食が始まる少し前から2分ごとのインターバル撮影を開始しましたが、全然月が入らない画角なので、露出確認くらいの意味しかありませんでした。

少しずつ画角に入ってきた頃にはすでに部分月食が進んでいます。

 

だんだんと影が大きくなり、ちょっとずつシャッタースピードを遅くしながら露出調整をします。

 

が、ここで三脚を蹴ってしまう痛恨のミス。

そんなに強く蹴ったわけではないので大きくは動かなかったと思うけど、大丈夫かな……。

2:30〜3:53 皆既食

すっかり月の全体が地球の影に隠れました。

最大食に合わせてどんどんシャッタースピードを下げていきます。

2分ごとにタイマーが動いて、Z6IIIの背面モニターが点灯し小さな音でシャッターが切られたことがわかるので、その音を聞いてシャッタースピードを調整を始めます。といっても毎回1/3段シャッタースピードを動かすだけなんですが。

最終的に1/2秒になったところでちょうど最大食になりました。

 

ここから徐々に部分食に移行しますが、まだ皆既月食中なので月の明るさはほとんど変わりません。

3:53〜4:56 皆既食の終わりから部分食の終わり

皆既月食が終わり少しずつ月の明かりが戻ってきます。

そして月食の終わり頃には薄明の始まり。

西側に沈む月の反対の東側の空は明るくなってきています。

月が沈む直前には赤富士になり徐々に人も減っていき、月が沈んだら撤収です。

 

待機から数えておよそ8時間。お疲れ様でした。

撮影機材

今回の撮影機材を紹介します。メインとサブを用意しました。

メイン機材

  • Nikon Z6III + NIKKOR Z 35mm f/1.8 S
  • Leofoto LS-224C + LH-25(三脚・雲台)
  • Aquila レンズヒーターEH
  • ロワジャパン TC-2006(タイマー付きレリーズ)

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こちら機材で富士山をバックにインターバル撮影をし、比較明合成の素材を集めます。

サブ機材

  • Nikon Zfc + FTZ II + SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary

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こちらは手持ち撮影で換算900mmの赤銅色の月を狙っていきます

インターバル撮影

今回主目的である風景写真は以下設定をベースにシャッタースピードを変えながら適正露出になるよう撮影していきました。

  • F4
  • ISO 1600
  • SS1/80s〜1/2s

こういったインターバル撮影ではF値を固定してISOまたはシャッタースピードを変えて撮影するのが定石です。

F値を変えてしまうと絞りを開けるにつれて周辺減光がかかり、露出差が出てしまう為です。

ISOと比較してシャッタースピードの方が露出調整がしやすい為、今回はシャッタースピードの変更としました。

月食が進む度に毎回ちょっとずつシャッタースピードを遅くして露出調整を行います。

 

インターバル撮影はカメラでも設定できますが、今回はタイマー付きレリーズを使い2分間隔で撮影しました。

途中で細かく設定を変更できるように変更猶予として2分です。

 

レンズは久しぶりのNIKKOR 35mm f/1.8 S

camelog.com

最近は単焦点レンズを使う機会が多いです(と言っても他はNIKKOR 50mm f/1.4しか持ってないのですが)。

夜空と風景のバランスが一番良いので、近頃はもっぱら星空撮影レンズとして使っています。

スナップとかで使うのも好きなんですけどね、GR IIIにその座を奪われてしまっています。

 

今回の皆既月食での使用を考えた時、24mmだと月が小さくなってしまうし、50mmだと富士山が大きくなり過ぎてしまい、月の軌跡がほとんど入らないということになってしまいます。

35mm、バランス最高です。

三脚とレンズヒーター

三脚はいつものLeofoto LS-224Cと雲台LH-25の組み合わせ。

軽いし、ブレないし、丈夫だしということで2泊3日のテント泊登山にも持っていける三脚。

全長が1mちょっとなので少し背が低いんだけど使い勝手が良いのでなかなか他の三脚を検討できずにいるのだけど、いつのまにか代理店で取り扱い終了になってました。

別の似たようなスペックの三脚があるのかな。

widetrade.jp

と思ったらLS-225Cという新しい三脚があるんですね。

4段から5段になって、10cmほど背が高くなっている一方、収納がコンパクトになってるんですね。

widetrade.jp

そして今回はレンズヒーターを使いました。

アストロアーツで取り扱っているAquilaレンズヒーターEHというケーブルタイプのレンズヒーターです。

ベルトタイプのレンズヒーターと比べると当然細いのでレンズに巻き付けやすく、巻いた後でもピント調整のためにフォーカスリングを回すことができるので、取り回しがしやすいです。

今回霧も出ていたのでレンズが結露で曇ることを懸念して持っていきました。

月単体の撮影

並行してZfcによるクローズアップ撮影も行いました。

やはり手持ちでは結構キツイ。

手ブレは抑えられるのですが、ファインダーに月を入れてピントを合わせるのを手持ちでやるのが大変でした。

 

次回があるなら最低でも三脚、できればポータブル赤道儀を使って追尾しながら撮影したいですね。

 

レンズは僕が持っている中では最長のレンズ、SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporaryです。

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これは一眼レフ用のFマウントレンズなのでマウントアダプターのFTZ IIを使っています。

フルサイズ換算で900mmと、ようやく月を単体で撮影できる焦点距離になりました(本当は1,200mmくらいあるとセンサー全域で捉えられる)。

現像・ポストプロダクション

まず基本的にLightroom Classicでの現像処理をします。

だいたいはそれでおしまいにしますが、必要に応じてPhotoshopを使うのが普段の現像手順です。

 

今回は複数枚の写真を比較明合成したかったので、Photoshopも使っていきます。

インターバル撮影の現像

今回Z6IIIで2分間隔でインターバル撮影した写真素材は全部で100枚ほど。

この100枚の写真に対してLightroomで簡単に現像します。

今回は特に色味も変える必要ないですし、露出も撮影時でそこそこ完成しているので、ちょっとした調整のみです。

少し皆既月食中の月の赤銅色を調整する目的です。

調整できたら必要な写真全てに適用していきます。

 

できたらいつも通り現像してきます。

設定はサイズ変更なし、JPEG、品質100です。そこそこ重たいファイルになります。

 

次にPhotoshopを開いて、新規作成画面から「ファイル」、「スクリプト」、「ファイルをレイヤーとして読み込み」を選びます。

「ファイル」 > 「スクリプト」 > 「ファイルをレイヤーとして読み込み」

このあと読み込むファイルを全て参照で選択して「OK

「参照」 > 読み込むファイルを全部選んで > 「OK」

読み込みができたら合成するファイル = レイヤを選択します。

通常全部のレイヤーを選択でも良さそうですが、2分ごとのインターバルだとちょっと月の軌跡が線状になって多いと感じたので、1つずつ非表示にして間引きます。

 

間引いたらレイヤーの重なり方を選びます。

「通常」と表示されているセレクトボックスをクリック

初期状態では「通常」と表示されているセレクトボックスをクリックするといろんな重ね方が表示されます。

「比較 (明)」をクリックすると選択したレイヤーが合成される

「比較 (明)」をクリックすると、先ほど選んだレイヤーが全て比較明合成されます。

比較明合成は画像の明るい箇所だけを切り抜いて合成するようなイメージです。

星の周回運動による軌跡を見せたい時にも使われますね。

Nikon Z6III, NIKKOR Z 35mm f/1.8 S, 1/80 - 1/2s, F4, ISO 1600

こちらが完成した部分食から皆既食を経て、富士山に月が沈んでいく様子を一枚にしたもの。

前半部分で三脚を蹴飛ばした影響で若干軌跡がずれているようにも見えますが、あまり目立ってない……ということにしておきましょう。

 

よく見ると土星も一緒に下がってきていますし、他の星も僅かながら周回しているのがわかります。

月単体の現像

こちらはLightroomのみの現像です。

今回ブラケット撮影はしていないので、光と影の部分を重ねてターコイズフリンジを見せるような写真はできませんでした。

Nikon Zfc, SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary, 1/1600s, F8, ISO 400

Nikon Zfc, SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary, 1/1000s, F8, ISO 800

Nikon Zfc, SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary, 1/20s, F6.3, ISO 4000

特別色味の調整などはしませんでした。

ホワイトバランスと露出の調整くらい。

反省点

防寒対策の不備

Tシャツ1枚の上からレインウェアを着るだけではやはり寒かったです。

9月上旬とはいえ、標高が1,000mを超える撮影地。

深夜で下界の気温が28℃くらいだったとしても、ここれは22℃くらいになっています。時間帯によっては20℃を下回っていたかも。

東京の4月の昼間くらいの気温だと思ったら、フリースくらいは着ていても良かったかもしれません。

ヘッドライト忘れ

ヘッドライトを忘れてきてしまいました。

夜空の撮影では必須のアイテムなのですが、今回は基本が満月であることと撮影地に街灯や足元のライトがあった為、大ごとにはなりませんでした。

でもやはり暗いことには変わりないですし、撤収や道具の出し入れの時に、明かりがないと忘れて帰ってきてしまう要因になるので、ヘッドライトの携行は必須です。

三脚を動かしてしまったこと

前述しましたが、撮影の中盤くらいでインターバル撮影をしているカメラを載せている三脚を少し蹴ってしまいました。

暗くて足元が全然見えないのでせめて蛍光テープか何かを巻いておくといいのかなと思いました。

撮影方法の検討

インターバル撮影中、ずっと手元で露出を変えながら撮影をしていましたが、次回はブラケット撮影でカメラ側で露出を変えながら撮影をしようかなと思いました。

ブラケット撮影は1回のレリーズで3回シャッターを切り、露出オーバー、適正露出、露出アンダーの3枚を撮影してくれる機能です。こうすることによって風景の白飛びや黒つぶれをそれぞれ保管し合ってHDR合成ができる撮り方です。

まさに月食のように月の太陽光が反射している部分と地球影に隠れている部分をそれぞれ適正な露出で撮影したものを合成することもできるし、露出が変わっていく被写体も撮る写真が増えるのでセレクトしやすいメリットがあります。

 

じゃあ初めからやれよと思われるかもしれませんが、まあ今回はそこまでやらなくてもいいでしょとタカを括っていたのが正直なところ。

ブラケット撮影は撮影データが増えるのでポストプロダクションの処理が増えることになるので、最終手段なんですよね。

ただ、今回はさすがに撮影中慌ただしかったので、次回はブラケット撮影にしておこうかなと思っています。

まとめ

以上、2025年9月8日に起こった皆既月食の撮影後記でした。

冒頭に話したように、次回は来年2026年3月3日。しかも今回のような深夜帯ではなく日没後の月が登ってくるタイミングで起こる為、いろんな人が見やすい月食となります。

 

今度は東側に見える皆既月食なので、また場所の選定や撮影方法の検討から始めていきたいと思います。

 

それでは今日はこの辺りで。